お由布と清之助。うまく噛みあえば固い絆が結ばれる組み合わせの筈が、
どうしても裏目に出る。
この辺りの描写はよく描けていると思いました。
読者としては、お由布に肩入れするのが普通だと思いますが、清之助の側の気持ちが良く判ります。
真面目にやって来た者ほど相手に厳しくなってしまう。女性とのつきあいもなく、
あまり相手を知らないうちに夫婦になり、女房とはこういうものだという先入観に支配されている。
まるで俺のことか(笑)。
その辺りの事は小説の中でも説明されており、いろんなエピソードの中で少しづつ氷解して行くのかな?
と思っていましたが、なかなかその距離が縮まらない。
それがお由布の持つ「かたくなさ」なのか。
しかし体調不良で寝たり起きたりの女房に、清之助もけっこう辛抱強くガマンしてるなぁと感心。
この状況なら、もっと怒っている筈。
その辺りは物事を理性的に考えて、それほど横暴な人間ではないという評価をしています。
『相性』という言葉があります。
例えば、色々な意味でいい人がいるとします。
そんないい人だったら、誰と結婚してもうまくいくでしょうか。
相手と自分、どちらも幸せになれるでしょうか。
そういうものではないように思います。
それが『相性』です。
その人といると、
どうしても悪い面ばかりが強調されて
裏目裏目に出てしまう
相手のちょっとした癖も鼻につく
逆に、その人といると、
自分を素直に表現できる
相手の癖も気にならない
自分と相手、どちらがどれだけ正しいとか悪いとかではないのです。
それが、『相性』だと、思います。
お由布と清之助
どちらが、どれだけ正しいとか悪いとか言っても無駄なことです。
夫婦というのは、社会性を帯びていると同時に、とても個人的な関係です。
だからこそ、互いの気持ちが大切。
いい悪いの問題ではないと思うのです。
そのうえ、この二人は、どちらも真面目で世間知らず。
互いにこれまで生きるのに必死で、チカラの抜き方を知らなかったのか、
下手くそだったのかもしれませんね。
ちなみに、初稿での清之助は、もっと単純に嫌な奴だったのですが、
今回連載小説として手を入れるにあたり、清之助という人のことを、
もっとよく観察して考えてみた結果、こういう男性となりました。