ことば学
言葉は心。ことばは人生

「終わりよければすべて」のタイ旅行 ⑤

坐骨神経痛で摺り足歩行しかできないA子さんは、まだ当分私たちの元にはやってきそうにありません。

 

 

オレがS子さんを待っているから、先に入国審査に進んでいいよ

 

 

と言うA氏の優しさに甘えて、入国審査の列に一人並んだわたしでした。

 

 

飛行機の中での嫌なことは忘れよう!

タイよ!

タイ!!

 

 

明日から始まる楽しい日々を思うと、心も踊ります。

 

さて、わたしの番が来ました。

 

パスポートと入国カードを係員に提示します。

 

 

ん?

 

 

係員が何か早口で言っている…

 

 

わからん

 

 

訳がわからないので、航空チケットを見せてみる。

 

後ろに並んでいたカップルらしき人たちが、

 

 

ほら、航空チケットも見せるんだよ

 

 

なんて、ささやき合っている。

 

 

いや、いや、たぶん見せなくてもいいはずなんだけどね…

 

 

 

No 

No

 

 

 

と、係員は、またもや早口で何やら言っている。

 

 

ニンゲントハ ヨソウモシテイナイコトヲ トツゼンイワレルト

アタマガ パニックヲオコシテシマイ 

リカイフノウニ オチイッテシマウ ドウブツナノダ

 

 

仕方がない。

奥の手を使おう。

 

わたしは、係員の目を見て、きっぱりとこう言いました。

 

 

 

I don’t   know

 

 

 

係員は、わたしの顔を見つめ、

やがて何かを諦めたように、「行け、行け」という仕草を見せました。

 

 

なんとか入国。

ん、もぐりこんだのか?

いや、これでいいのだ!

 

 

 

すると、わたしよりずっと後ろの方に並んでいたはずのA氏とS子さんが、

すでに入国審査を終えて、わたしを待っているではありませんか。

 

 

 

どうしたの~

わたしたち、すんなり通してもらえたよ~

 

とS子さん。

 

 

いや~

わたしも、何が何だかわからないのよ~

 

 

と、言いながら何気に見つめた彼女の手元・・・

 

 

 

わかった!!

 

どうしよう!!!

 

 

ええっ、なに、どうしたの?

 

 

焦るS子さん。

 

 

うん…

 

 

わたしはS子さんの手元を指さし、言いました。

 

 

出国カード

 

 

ん?

それがどうしたの?

 

 

わたし、入国審査で入国カードしか出さなかった。

 

 

え~!!

 

 

のけぞるS子さん。

 

 

なんでぇ~

勝手に切り取ってはダメって確か書いてあるよねぇ?

 

 

う~ん

いやぁ

入国するんだから、入国カードだけでいいと、なぜか思って、

ビリビリッと、切り…離し…ちゃった…

 

 

え~

信じらんな~い!

よくそれで通してもらえたよねぇ

だいたいさぁ、ゆみちゃん、最近しょっちゅう海外行ってるじゃない

 

 

・・・

う~ん

・・・

いつもはダンナと一緒だし

・・・

 

 

ニンゲントイウノハ トキドキ ジブンデモ リカイフノウナコトヲ

シテシマウ ドウブツナノダ

 

 

もう!

ごとうさんたら、ゆみちゃんを甘やかしすぎ

 

 

ダンナのこともよく知っているS子さんなのです。

 

 

ゆみちゃん

 

 

口調を改めて、S子さんは言いました。

 

 

今回の旅は、あなたの自立の旅にしなさいね

 

 

ふぁい…

 

 

うなだれるわたし。。。

返す言葉もありません。。。

 

 

 

まあ、なんとかなるぞ

 

 

大人の対応を見せるA氏の笑顔に救われます。

 

 

 

にしても…

 

 

入国だけして出国の予定がないかのようなわたしは、

ずいぶんと怪しい奴だ

 

 

と恥ずかしくもあり、

 

 

で、帰りは無事出国できるのか

 

 

と不安にもなり、

 

 

とりあえず入国はできたんだから楽しんで、

帰りのことは帰りに心配しよう

 

 

と、結局は開き直ったわたしなのでした。

 

 

 

やれやれとばかりに三人そろって荷物を受け取り、

タクシーに乗り込んで、いざホテルへ!

 

 

初めて見るタイの街並み。

想像以上に都会です。

 

 

 

明日から始まるゴルフ漬けの日々に心躍らせながら、車は一路ホテルへ。

 

まさか、このあと、この旅最大のピンチに見舞われるとは、誰が想像したでしょうか?

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

投稿日時: 2017年02月20日

カテゴリ: ブログ

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