ことば学
言葉は心。ことばは人生

「終わりよければすべて」のタイ旅行 ④

 

さて、無事飛行機に乗り込みまして

 

わたしの席は

S子さんは、通路を挟んだ

そして、わたしの前の

 

いよいよ離陸です。

 

 

 

わたし、結構、この離陸する時の感覚好きなんです。

スピードがぐんぐん上がっていって、そしてフワッと浮き上がる。

 

たまりません~

 

あ、でもジェットコースターは、全然ダメなのです。

人間の感覚って面白いですね。

 

 

話が逸れました。

 

飛行機は無事離陸し、しばらくすると安定飛行に入りました。

乗客も、どこかホッとして、荷物を出してみたりゴソゴソしだすとき。

その時、氏が、いきなり座席をど~んとマックスに倒してきたのです。

 

マックスです!

マックス!!

 

 

角度にすると、約130~140度ですかねぇ。

 

 

おっと~

 

 

なんとなくイヤな予感…

これから約6時間、この人の後ろか~

でも、とりあえず我慢。

 

 

食事タイムには、当然のことながら背もたれはすっかり元に戻されました。

 

しかし食事が終了すると、再び背もたれマックスに。

と思ったら、背もたれマックスのまま、自分は体を起こしてパソコンをいじり出しました。

 

多分、タイに赴任中、あるいは出張のサラリーマンなのでしょう。

(以降、氏のことはサラリーマン氏とします)

 

にしても、

 

パソコン使うなら背もたれ戻せよ!

 

心の中で叫びます。

しばらくすると、サラリーマン氏疲れたのか、突然

 

あーあ

 

と大きな声を出しました。

 

あーあ

 

と、大きな声を出しながら、マックスの背もたれに体を預け、両腕を思い切り伸ばしたのです。

 

気持ちよさそうに

 

あ~あ

 

と言いながら、伸びをしたわけです。

当然、彼の両手は、わたしのすぐ眼前に。

 

うぉっ

なんだぁ?

 

わたしは、「このやろう」とばかりに、

その両腕をパシッと払い落とし…

 

たかったけれど、我慢しました。

疲れた時のこのポーズ、気持ちはわからないでもない。

 

続いてサラリーマン氏、靴を脱いだ足を前の壁にガバッと立てかけました。

(この表現でわかっていただけますかねぇ)

 

 

 

わたしの頭の中で、

 

プチッ

 

と、小さな音がしました。

 

 

 

これからの数時間、この男の後ろで我慢し続けるのは精神衛生上よろしくない。

 

小さな決意をしました。

 

あの~

 

後ろからサラリーマン氏の肩を軽く叩いてお声がけ。

 

ここエコノミー席で狭いので、もう少し背もたれを戻していただけませんか。

 

サラリーマン氏曰く。

 

いくらエコノミー席だからって、背もたれは倒れるようにできているし、ここはそうしていい席なんだ。

 

???

 

意味不明~

 

エコノミー席に、そんな特別席があったのか?

 

確かに、壁のすぐ後ろの席は前が広くなっているので、人気の席と聞いたことはあります。

でも、それはお得感のあるラッキーな席なのであって、

後ろのことも考えず好きにしていい〝 特別席 ″ ではないのでは?

 

 

 

だいたい、あんたさぁ

じゃあ、車が200キロまで出せるようにできているからって

どこもかしこも200キロでぶっ飛ばすか?

制限速度は守るだろうし、横を人が通ったりしたら徐行するだろうが

てめえみたいなのを、手にした権利を振りかざすことしか考えない

『権利バカ』って言うんだよ!!

 

 

と、言いたいのをグッとこらえました。

ここで揉めると、回りの乗客を不愉快にさせるし…

 

 

とはいえ、席をマックスに倒されたままだと、

わたしは自分の座席の画面が光っちゃって全然見えない。

いくら6時間ほどの旅とはいえ、退屈しちゃうよ!

 

そこで考えたのが、席を移動するということ。

 

CAさんに事情を話し、どこかに空いている席はないか探してもらいました。

 

ですが、残念ながら満席だったようです。

するとCAさんがチーフパーサーらしき男性を連れてきました。

わたしは、再び「これでは画面が見えない」と言いました。

すると、チーフパーサーは言いました。

 

あなたも同じように席を倒せば見える

 

 

え~!

そうですか!!

そういうもんですか!!!

 

 

目から鱗というか、びっくり仰天というか…

だって、それ、後ろの席の人にわたしと同じ思いをさせろってことですよね。

わたしの中にそういう発想はありませんでした。

ある意味、新鮮な発想。

でも・・・

 

 

わたしにはできない!!

 

 

もちろん、こんなやり取りをしている間も、

前席のサラリーマン氏は全くの知らん顔。

 

 

おめえのことだよ。

おめえのことで、こんなに揉めてんだよ!!!

 

と思ったけれど我慢しました。

 

 

そこで再チャレンジ。

 

あの~

 

再びサラリーマン氏に声をかけました。

 

テーブルで作業したいので、席をもう少し戻していただけませんか?

 

作業したいと言えば応じてくれるかもと思ったのです。

 

 

眠い

 

のひと言で却下。

 

 

きぇ~い

 

 

の掛け声と共に、前席をガ~ンと蹴り上げ、頭から水をぶっかけ

 

たかったけれど、我慢しました。

 

 

だって、わたし大人だもん。

そんなことをすれば、わたしの方が変な奴にされる。

こんな奴のために、なんでわたしが変人扱いされなければならない。

 

でも、

 

心の中は嵐。

 

 

 

それでも、わたしがグッと堪えたのは、

 

もしかして、わたしの方が間違っているのか?

 

と思う気持ちもあったから。

 

 

そんなこと、ありませんか?

 

自分が正しいと信じてきたことが、周りの人に当たり前のように否定されたとき、

 

もしかして、わたしが間違っているのか??

 

と、自分の価値観を疑ってしまうってこと。

そんな経験、ありませんか?

 

 

半分は、そんな状態。

もう半分は、飛行機を降りたらA氏に聞いてみようと思っていたから。

長年航空会社でチーフパーサーとして働いてきたA氏に聞いてみよう。

 

そう思って、じっと我慢していたのでした。

 

 

さて、通路を挟んで座っていたS子さん。

 

坐骨神経痛との戦いに必死のご様子。

 

たまにチラッと見ては、

 

大丈夫?

 

と声をかけてみたのですが、

 

ウン

 

と小さな声で応えるのみ。

 

あとは、お地蔵さんよろしくジ~ッつと固まってました。

ご苦労様でございます。

 

 

さあ!

そうこうするうちに、

やっと

やっと

飛行機がタイに着きました。

 

 

わぉ~!!

 

 

叫び出したいほどの喜びと解放感。

 

 

喜び勇んで飛行機を降りると、A氏に中でのことをまくしたてました。

 

 

ま、たしかに座席がそういう風にできてるからね、

倒すのがダメとは言えないわなぁ。

 

 

ダメなんて言ってないよ。

少し戻してほしいとお願いしたんだよ。

だいたいエコノミーにそういう特別席ってあるの?

 

 

A氏、笑いながら、

 

 

あるわけないよ。

エコノミーはエコノミーだよ。

 

 

でも、ここはそういう席なんだって言ったもん。

 

 

そういう奴、結構いるんだよね。

俺は、さんざんそういう奴の相手をしてきた。

特に、タイとかに赴任している奴って、

(タイではいい待遇だから)なんか勘違いしてるのが多いんだよね。

 

 

そうだ、そうだ!

アイツはおかしい!

ほんと感じ悪かった!!!

 

 

中での出来事を思い出して、新たな怒りに燃えるわたしの足取りは、

どんどん早くなり、一緒に歩くA氏もまた軽やかな足取り。

 

哀れ、坐骨神経痛で摺り足歩行のS子さんは、

どんどん遅れる

離れていく~

 

 

 

やがて、入国審査場に到着。

 

振り返ってみてもS子さんの姿は見えず…

入口でS子さんを待つというA氏のお言葉に甘えて、

わたしは一足先に、審査を待つ人々の列に加わりました。

 

 

いよいよ、タイだわ!

ここで気持ちを切り替えよう!!

もうここで、飛行機の中での嫌なことは忘れよう!!!

 

 

 

希望に胸を膨らませ審査を待つわたし。

 

 

まさか、新たな試練が、またここでも待っていようとは、

誰が想像したでしょうか。

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

投稿日時: 2017年02月13日

カテゴリ: ブログ

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