ご感想について ④

今日は一気にいこうと思います。

 

 貸本屋を介して知り合う幸吉については、次第に縮まる距離感が自然でいいと思いましたが、
幸吉が飲み屋の帰りでお由布を抱きしめたところが、少し違和感。

初めて一緒に飲食をした晩の行動としては早すぎる。

それに輪をかけて、あっさりお由布の心が幸吉に傾いて行くのも軽すぎる。

そして清之助と別れ、幸吉の住む長屋で夕餉を作って待つ。

この畳みかけがあまりにも早くて、やや尻切れトンボの感がありました。
あえて修羅場を描かないという手法があるのも判りますが・・・

ちょっと惜しいな、という印象です。


前半の描写で清之助の事を、子供の頃から奉公で苦労し女性、
妻に対して固定観念はあるものの、情がないわけではないと表現しています。
別れの場面でも、それを活かす事は出来たと思います。
幸吉の存在を知り、怒って修羅場も起きるが、
自分の力ではお由布の心を溶かす事が出来ないという事を納得して
離縁に応じるという流れもある様に思う。
それか、幸吉の存在で修羅場が起きる事で、清之助の本心が吐露され、
それでようやくお由布の心が開くという展開もあり得る。

あの流れで、お由布が何事もなく清之助と別れて幸吉と結ばれる、
というのが何か「ハーレクインロマンス」的で、深く心に残らないというのが「惜しい」。

 

 

この感想をいただいた後で、また別の方から新たに感想を送っていただきました。

この元となる作品は、同人誌にも掲載し、合評会でも取り上げられましたし、

その後、郵便で感想を送ってくださった方もいらっしゃいました。

 

そんな皆さんの感想を読んでいると、

人それぞれの読み方

人それぞれの感じ方

があり、それが勉強にもなるし、面白いところです。

 

作品を発表したからこそ味わえる醍醐味とでも申しましょうか。

 

幸吉が、蕎麦屋の帰りにお由布を抱きしめたこととか、

お由布の気持ちの動きについての理由というと大げさですが、

そこに込めた思いを、作者であるわたしがうまく伝えきれなかったのは、

幸吉やお由布に申し訳ないなという思いです。

 

それから、お由布と清之助の別れについて、もっときちんと書くべきか否かは、

この時のわたしは、こういう終わり方しか考えなかった。

としか言えません。

 

ただ読み手に意図が伝わらず、尻切れトンボのような印象を抱かせてしまったことは、

わたしの力不足かと思います。

 

反省です。

 

 

いずれにしても、こんな丁寧な感想を送ってくださったYさまには、

心から感謝申し上げます。

本当にありがとうございました。

 

次回は、新たに送られてきましたご感想について書かせていただく予定です。

 

 

 

 

ご感想について ③

 

お由布が包丁で自害しようとしたところが、この小説のクライマックスですが、

その後の清之助の素っ気ない態度で、まるでなかった事の様に過ぎて行く。

読者としては少し物足りないところですが、それが筆者としての狙いだったかも知れません。

 

もし、クライマックスのシーンで、清之助が、

 

 

お由布、なぜこんなことをしたんだ!

 

 

と、問うことができたなら、この小説の展開も、また違ったものになったのだろうと思います。

 

 

という書き方をすると、

 

 

自分で書いているのに、他人事のような言い方だな

 

 

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

 

この感覚については、少し説明が難しいのですが……

 

確かに、登場人物の設定は、当然ですが、わたしがしています。

 

話の展開も。

 

 

だからといって、ストーリーのすべてを、わたしにコントロールできているわけではありません。

 

 

小説を書き始めると、登場人物たちが、それぞれに生き生きと動き始めます。

 

そうなるとしめたもので、わたしは、ひたすら彼らを観察し、描写していきます。

 

 

そういうときが、一番楽しい。

 

 

 

作品を書いていて、途中で煮詰まってしまうとき。

 

 

そんな時は無理に書き進めず、人物設定にまで戻ります。

 

 

そして、今一度丁寧に設定し直します。

 

すると、スムーズに動いていくようになる。

 

そんな経験が何度もあります。

 

 

 清之助だけでなく、お由布もまた、素直に語ることができたなら、

この夫婦も仲のよい夫婦になれたはず。

 

でも、なれなかった。

 

それは何故なのか?

じっくり考えてみるのも、楽しいですね。

 

 

ご感想について ②

 

お由布と清之助。うまく噛みあえば固い絆が結ばれる組み合わせの筈が、

どうしても裏目に出る。

この辺りの描写はよく描けていると思いました。
読者としては、お由布に肩入れするのが普通だと思いますが、清之助の側の気持ちが良く判ります。

真面目にやって来た者ほど相手に厳しくなってしまう。女性とのつきあいもなく、

あまり相手を知らないうちに夫婦になり、女房とはこういうものだという先入観に支配されている。
まるで俺のことか(笑)。


その辺りの事は小説の中でも説明されており、いろんなエピソードの中で少しづつ氷解して行くのかな?
と思っていましたが、なかなかその距離が縮まらない。
それがお由布の持つ「かたくなさ」なのか。

しかし体調不良で寝たり起きたりの女房に、清之助もけっこう辛抱強くガマンしてるなぁと感心。
この状況なら、もっと怒っている筈。

その辺りは物事を理性的に考えて、それほど横暴な人間ではないという評価をしています。

 

 

『相性』という言葉があります。

 

例えば、色々な意味でいい人がいるとします。

そんないい人だったら、誰と結婚してもうまくいくでしょうか。

相手と自分、どちらも幸せになれるでしょうか。

そういうものではないように思います。

 

それが『相性』です。

 

その人といると、

 

どうしても悪い面ばかりが強調されて

裏目裏目に出てしまう

 

相手のちょっとした癖も鼻につく

 

 

逆に、その人といると、

 

自分を素直に表現できる

相手の癖も気にならない

 

自分と相手、どちらがどれだけ正しいとか悪いとかではないのです。

 

それが、『相性』だと、思います。

 

お由布と清之助

 

どちらが、どれだけ正しいとか悪いとか言っても無駄なことです。

夫婦というのは、社会性を帯びていると同時に、とても個人的な関係です。

だからこそ、互いの気持ちが大切。

いい悪いの問題ではないと思うのです。

 

そのうえ、この二人は、どちらも真面目で世間知らず。

互いにこれまで生きるのに必死で、チカラの抜き方を知らなかったのか、

下手くそだったのかもしれませんね。

 

 

 

ちなみに、初稿での清之助は、もっと単純に嫌な奴だったのですが、

今回連載小説として手を入れるにあたり、清之助という人のことを、

もっとよく観察して考えてみた結果、こういう男性となりました。