映画『妻よ薔薇のように』(家族はつらいよⅢ)

映画『妻よ薔薇のように』(家族はつらいよⅢ)を、観てきました。

 

 

このシリーズは大好きで、Ⅰから観ています。

 

今作は、主婦に焦点を当てていることもあり、自分自身と重ね合わせてみたりして、なかなか深かった~

 

このシリーズらしく笑える場面も沢山ありましたが、今の結婚生活、

そして前の結婚生活を思い起こして、何度も泣いてしまいました。

 

特に、お土産のスカーフの柄を見た瞬間、そこに込められた思いが、

ワッと心に響いてきて、涙が止まりませんでした。

 

人間、やはり素直が一番かと思いました。

 

 

ところで、この映画、客席の年齢層がかなり高く、

館内が暗くなってから入ってらして、席を見つけることができない方が

多く、気が気ではありませんでした。

 

わたしも、みなさんの案内をするわけにもいかず……

 

 

ご高齢の方は、なるべく明るいうちに、

入り口の座席表を観てからの入場をお願いいたします。

連載小説『お由布』 その二

 二

 

 夜は、まだ明けない。

 暁の空の向こうには、どんな明日が待っているのだろう。

 お由布は、「ほぅっ」と小さく息を吐いた。痛む手に目をやると、その小さな手は、冬場の水仕事のために真っ赤に腫れていた。泣きたい気持ちは、もちろんあるけれど、泣いてなんかいられない。お由布は、生きていかねばならない。

 父の買って帰る簪を楽しみに待っていたはずが、戻ってきたのは戸板に載せられた父の冷たい体だった。親子三人の楽しい生活はあっけない幕切れとなった。

 父の葬式が済んでから寝込んだ母は、二月になってようやく床上げすると、家主の紹介で不忍池東にある高岩寺門前の蕎麦屋に賄いに通うようになった。夜は夜で、近くの古着屋の仕立て仕事を引き受けていた。そうして、その少ない稼ぎの中からやりくりをして、お由布に手習いを続けさせた。少しでも良い奉公先に行けるようにとの配慮であった。

「一日も早く奉公に出て、安心させておくれ」

 母は、お由布の顔を見るたびに言った。

 熱い思いが天に通じたのか、十歳の春を迎えると、口を利いてくれる人があり、お由布は両国の料理茶屋「日野屋」に、住み込みの奉公に上がることとなった。

「日野屋」は、主夫婦の他には、豆腐作りの職人に住み込みと通いの女中を合わせても十名足らずの小さな店であった。しかし、看板料理の淡雪豆腐はもとより、座敷や庭の造作までも売り物にした、両国でも屈指の名店の一つである。

 また、亡くなった父が、その庭の手入れのために月に一度は通っていた店でもあった。主人の川口与平は父をよく見知っており、その縁あってのお由布の奉公であった。

 ようやく母の願いを叶えることができたと、十歳になったばかりのお由布は安堵の胸を撫で下ろした。が、お由布の奉公先が決まったことが、逆に母の気の緩みを誘ったのか、いよいよ三日後には奉公に上がるという、その明け方、まるで蝋燭の炎が消えるように、母は静かに息を引き取った。安らかな死に顔であった。

 日野屋からは日延べの提案もなされたが、母の葬儀が済んでしまえば、家の片付けなどに時はかからない。一人で長屋に置いておくわけにも、誰かが一時的にでも預かって離れがたくなっても具合が悪かろうということで、お由布は予定通りに日野屋に向かった。

「幼くして父を失い、この度は母を失い、悲しいことや辛いことも多かっただろう。これからは、わたしたちを親とも思って励んでおくれ」

 主の与平は、落ち着いた声で言った。

「困ったことがあったら、いつでも遠慮なく言ってね」

 おかみさんが優しく言葉を添えた。

「ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます」

 お由布は、畳に額をこすりつけるようにお辞儀をした。零れ落ちた涙が、畳を濡らした。

「なにがあっても、ここで生きていく。ここしか、もう生きる場所はない」

 十歳のお由布は、十歳なりの決意を固めたのだった。

 

 豆腐料理を看板にしている日野屋の朝は早い。まだ夜も明けないうちからの水汲みに始まり雑巾がけ、洗いもの、そして、父も愛した自慢の庭の掃き掃除……。お由布の小さな白い手は、朝早くから始まる水仕事のために、あっという間に真っ赤にひび割れた。

「お由布」

 店の奥から、呼ぶ声が響く。

「はーい、ただいま」

 大きな声で返事を返す。洗い終えたばかりの野菜をかごに入れ、体全体で抱えるように持つと、急ぎ店の中に戻っていく。ここでは、涙を流す暇もない。

 働いても働いても、仕事は次から次へとやってくる。毎晩仕事を終えて倒れ込むように布団に入ると、あかぎれで痛む手をさすっているうちに、あっという間に深い眠りに落ちていくのだった。

 

   つづく

 

 

⇒連載小説『お由布』

奈良・京都の旅 その3

興福寺そばのレストランで美味しいランチをいただいた後は、

京都へ移動です。

 

その前に、途中に位置する酬恩庵一休寺に寄りました。

 

 

虎丘庵の特別拝観も。

 

 

これは、逸話に基づいて後から造られたもの。

 

 

 

この奥の小さな庭は、国の管理、つまり国有地です。

 

 

一旦ホテルにチェックインしてお休みしたら、粟田山荘へ。

 


 

会席料理をいただきました。