「マリンブルーな季節 2019」 5

   
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「大丈夫か?  いきなり転ぶわ泣き出すわ。訳わからんて。子どもか。とにかく、早よ乗れや」

 手を差し出すでもなく、そそくさと車に乗り込む哲也。

「哲ちゃん、相変わらずやね」

 ワンピースの裾の砂を払い、助手席に座りながら、真奈子は言った。

 私は今日、初めての帰省をしてきたのに、家には誰もいなくて、自分で鍵を開けて家に入ったの。家族は誰も私のことなど、気になんてしていないのよ。

 心の中の言葉は、しかし発せられることはなかった。

「オレ、 今、地元のビジネス専門学校の観光科に通うてんのや。それでな、調理師の免許も取ろう思うて、調理師学校にも通ってるんやで」

 気配を察したのか、哲也は真奈子のことには触れず、自分のことを話し始めた。兄の生前、あんなにもヨットで世界を目指す夢に夢中だった哲也の口から、民宿の経営に懸ける夢が語られ続けた。

 夢を語る人の顔が、実はとても美しいことに、真奈子は初めて気がついた。

 やがて車が家に着いた。車から降りようとする真奈子を見て、哲也が言った。

「じゃあ、またな。にしても、おまえ、その格好」

 先ほど浜辺で転んだ際に濡れたスカートが、乾いてごわごわになっていた。

「東京へ行って、少しはおしゃれになったかと思ってたのになあ」

 哲也の言葉に、急に恥ずかしさが込み上げてきた。

「うるさいな。どんな格好してようと、私の勝手や」

 思わず尖った声が口から出た。

「なんや、その言い草は。おばさんから今日帰ってくるって聞いたから、わざわざ迎えに行ってやろうとしてたのに」

「誰も迎えに来てなんて、頼んどらへん。時間だって、全然違っとったし…… 大体哲ちゃんなんかねえ」

「なんや、オレが、オレがどうかしたんか」

 心とは裏腹の言葉が溢れ出る。

「哲ちゃんなんか……。哲ちゃんみたい、簡単に自分の夢変えられる人なんかと、話なんてしたくもないわ」

「は? な、なんやて」

「あんなにヨットで世界を目指すって、言ってたくせに。お兄ちゃんが死んだ途端に、民宿継ぐって。なんやの、それ。夢って何。夢って、そんなに簡単に変えられるもんなん」

 しまったと思う間もなく、言葉が口から転がり落ちていた。

 哲也が黙り込む。真奈子は気まずさをこらえて、じっと哲也の出方を伺った。

「夢、夢って。ヨットだけが人生か」

 真奈子を睨むようにして、哲也が低い声で言った。

「真一は死んだ。もう、おらんのや」

 再び黙り込む。沈黙にこらえきれず、真奈子が言った。

「もう、ええよ。あんたみたい、簡単に自分の夢、取っ替えるような男、最低や。世の中にはねぇ、どんなに苦労しても諦めずに、必死で夢を追い続けてる人間だって、いっぱいおるんやに」

 乱暴に車のドアを閉める。

「どんな人生生きようと、俺の勝手や」

 言うや否や、車を急発進させて哲也は去っていった。

 その時、玄関が開いて、母が顔を出した。

「誰や、大声出して。あれ、真奈子。あんた、カバンだけ置いて、どこ行っとったん。今の哲ちゃんやろ。どうしたん」

 母の問いかけに応えることもなく、真奈子は自分の部屋に駆け上がった。

 

 何もかもが、自分のことだった。哲也にではなく、自分にこそ向けた言葉なのだった。

 ひねくれもんの辻褄あわせ。

 

 真奈子は恥ずかしさと情けなさとで、心が痺れるほどの痛みを感じた。

 

 

こぼれ話

「マリンブルーな季節 2019」という小説の連載を始めています。

これは、今から20年も前に書いた作品です。

 

今回、手を入れて連載するにあたり、読み返しているわけですが、

 

あ~、やっぱり

この作品、好きだなぁ❤️

 

と思います。

 

「お由布」のときも、そうだったけど(^-^ゞ

 

でなきゃ、20年も経って、また書き直してまで発表しようとは思いません。

 

今回は、題名に「2019」と敢えて付けました。

 

話の大筋は変わりませんが、細かな街の描写が現代と合っているか

確認しながら書いています。

 

が……

 

なにせ、わたし自身が古い人間なので、

現代と合っているかに、気がつけるかどうか……?

 

それでも、心を込めて書いています。

 

これまでは比較的短めの文章でしたが、ここからは、少し長目の文章となります。

 

あまり短いと、流れが切れて、勢いがなくなるかなと思いまして。

 

どうぞ、これからも、よろしくお願いします。

 

 

ナイルの流れに逢いたくて ⑫

2月後半に行ってきた
 
 
エジプトツアー
 
 
いよいよ最終日です。
 
 
 
 
訪れたのは、
 
 
 
ダハシュール
 
 
 
 
サッカラ
 
 
 
 
面白いピラミッドが見られました。
 
 
 
 
 
まずは、サッカラの階段ピラミッド。
 
 
 
 
 
 
 
世界最古のピラミッドです。
 
 
 
 
 
次は、ダハシュールの屈折ピラミッド。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ピラミッドの角度が、途中で変わっています。
 
 
 
 
ピラミッドの作成過程で
 
 
 
このままでは、上手くできない!
 
 
 
と気づき、角度を変えて完成させたのだそうです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こうして、ピラミッドの形が完成していく過程を見ていくと、
ピラミッドは、宇宙人の作ったものではなく、
やはり、人間が途方もない年月をかけて作っていったのだと納得させられます。
 
 
 
 
 
さて、最終回の今日は、ツアーのまとめもしてみたいと思います。
 
 
 
 
 
 
その1.食べ物
 
 
エジプトでは、小麦粉が作られています。
 
その小麦粉がいいのか、パンは素朴な味わいが、わたし好みで、美味しかったです。
 
 
 
ナンを焼いています。
 
 
それからフルーツも。
 
特にメロンとバナナ。
 
 
イチゴやトマトは、野性的?でした。
 
 
エジプトスイーツはイケた💕
 
 
 
 
 
 
 
 
 
約9割がイスラム教徒のエジプトの料理は、お肉は牛肉か羊肉。
 
 
羊肉が少々苦手なわたしには残念ながら、あまり口にあいませんでした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その2.警備
 
 
前にも書きましたが、飛行場、観光地、至るところに警察官がいて、チェックをしてました。(ダムは軍隊)
 
 
 
 
 
こんな感じで、普通に銃を持っています。
 
 
どこでだったか、ジーパン姿の青年が腰にピストルを持っていて、ガイド氏に尋ねたら、
 
 
彼も警官だよ
 
 
とのことでした。
 
 
 
 
 
その3.洗濯物
 
 
 
どこの家でも、こんな感じ。
 
 
洗濯竿にハンガーで干してあるのは、一度も見かけませんでした。
 
 
雨が年に1~2回しか降らなくて、空気の乾燥しているところだから、
こんな風に重ねて干しても乾くのでしょう。
 
 
 
 
 
その4.気候
 
 
 
エジプトは、砂漠地帯です。
 
 
3月からは砂嵐が吹き荒れるそうです。
 
 
わたしたちが行った2月は観光に最適なシーズンでした。
 
 
まるで、避暑地に来たかのような快適さ。
 
 
乾燥が激しいと事前に聞いていたので、
フェイスパックやヘアートリートメントも
用意していきましたが、
心配するほどのことはありませんでした。
 
 
わたしにとっては、日本の冬の乾燥の方がキツイ。
 
 
静電気が起きるしね。
 
 
 
でも、風が吹くと、砂漠特有の細かい砂が舞います。
 
 
サングラスにマスク(あるいは口元を覆うスカーフなど)は、必須です。
 
 
 
そして、朝晩の寒暖差が激しい。
 
 
昼間でも風が吹くと寒い。
 
 
わたしたちも、常にダウンのコートなどは持ち歩いていました。
 
 
あと、日差しが強いので、日焼け止め、長袖シャツ、帽子も。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その5.保険の話
 
 
 
エジプトの人口は、約9,000人だそうです。
 
そのうち車を持っているのは3割ほど。
でも、そのほとんどが首都カイロに集中しています。
 
でもって、毎日すごい渋滞。
 
エジプトは、人優先ではなく、車優先だそうです。
 
 
損保に勤めていたわたしは、
 
 
この国で自動車保険は、成り立つのか
 
 
と疑問に思い、ガイド氏に聞いてみました。
 
 
 
すると、エジプトにも保険はあるのだそうです。
 
 
でも、入る人は少ない。
 
 
なぜなら、保険会社を信用していないから。
 
 
だそうです。
 
 
 
 
家を建てるにも銀行ローンを組まないのは、
銀行を信用していないから。
 
保険に入ったり、ローンを組んだりできるのは、
社会が安定しているからなのですね。
 
 
 
それに、保険って、規則を守る前提があって、成り立つもの。
 
 
 
車優先で信号はないし、あっても守らない国では、
保険は成り立ちませんね〰️
 
 
 
 
 
 
 
 
その6.買い物
 
 
エジプトは、世界有数の観光大国。
 
 
観光収入が、生活の支えです。
 
 
なので、基本、なんにでもお金がかかります。
 
 
 
 特に買い物は、要注意。
 
 
 
観光地で、あれこれやり取りしながら、
お土産を買うのは旅行の醍醐味ですが……
 
 
 
誰が教えたんだ
 
って、日本語を連発して、話しかけてきます。
 
 
 
で、一人から買おうとすると、
他の人たちも回りにワッと群がってきて、
身動きが取れなくなることもあるそうです。
 
 
それと、粗悪品も多いとこのと。
 
 
で、ここなら安心という店で買ったのが、これ。
 
 
 
 
 
 
本物のパピルスで作られたカレンダー。
 
 
星座も入ってます。
 
 
買った時は、くるくるっと丸めて、
賞状を入れたりするような筒に入れてくれるので、
スーツケースにも安心して入れられます。
 
 
 
ちゃんとしたお店は、梱包も丁寧なので、
後々も安心です。
 
 
 
他に、香油やカルトゥーシュ、パピルスの栞、ミニピラミッドなど、
あれこれ買ってしまいました 😜
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今回のエジプトツアーは、
これまで行った中で、最もハードな旅行でした。
 
 
 
今のうちに行けて、
そして、無事に帰ってこられて良かったと思います。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。