四季島の旅 ⑥

四季島の旅二日目は、朝起きると、もうそこは函館でした。

 

そして、函館の朝は早い。

 

6時半にはバスに乗って朝食会場へ。

 

着いたのは、料亭冨茂登。

 

料亭です。

 

料亭だから、本当は夜しか営業していないのですが、

四季島のためにだけに朝食を準備してくださっているのです。

 

 

函館では朝食の定番といういかそうめんや、粒の大きなイクラ丼をいただきました。

 

 

 

 

 

帰りには、おかみさんを始めとするお店のみなさんが、見送ってくださいました。

 

 

 

感激です。

 

 

朝食後は、アイヌ演舞を拝見し、函館市北方民族資料館へ。

 

 

 

 

 

貸し切りの路面電車に乗り、朝市にも行きました。

 

 

四季島の旅 ⑤

日光東照宮の拝観を終え、四季島に戻るとディナーです。

 

車内での特別なひとときということで、一応ドレスコードがあります。

 

 

少しばかりオシャレをしてDININGしきしまへ。

 

 

お料理には、それぞれに合ったおすすめのお酒がセレクトされていましたので、それらを順番にいただきました。

 

 

昨日の四季島最初のお食事であるランチと今夜のディナーは、「TRAIN SUITE  四季島」の総料理長岩崎均さんによるものでした。

 

 

疲れと満腹感と、列車の心地よい揺れで、この日の夜はおかげさまで熟睡できました。

 

 

 

連載小説『お由布』 その十

 十

 

 夏から秋と、季節は足早に過ぎ去っていき、木の葉が徐々に色づき始めた。

 ふとしたことから引いた夏風邪が元で、冬の間中お由布は寝たり起きたりの毎日を過ごした。時折り、清之助が心配そうな視線を寄越すが、それすらも煩わしいと感じてしまう。

 

 

 立冬。

 外では一足早い北風が木々を揺らし、ざわざわと悲しげな音をたてていた。枝にわずかばかり残っていた木の葉も、一枚残らず散り落ちた。

 お由布は、夕餉の支度を終え清之助を待っていたが、その日はいつになく帰りが遅かった。ようやく夜半になって帰ってきた清之助の顔は、行灯の明かりの暗さも手伝ってか、ひどくやつれて見えた。

「今日、店でボヤ騒ぎがあってな」

 重い口調で、ぼそりと言った。

「ボヤ騒ぎ」

「ああ。幸い気づくのが早くて大事には至らなかったが、あと少し遅れていたらと思うとぞっとする」

と、俯き加減で首を振る。

「店はもちろん、ここまで折角勤めてきた私の身だって、どうなっていたことか」

 清之助は、ふうっと大きなため息をついた。しかし、そんな清之助の様子とは裏腹に、お由布の心は高揚していた。

 清之助が、こんな弱気なところを見せたのは、これが初めてだった。ああ、やっぱり私たちは夫婦なのだと思った。こんな時こそ役に立たなければ。元気づけなければ。お由布は思った。

「大丈夫。何とかなりますって」

 清之助の手を握り締めて、努めて明るい声で言った。精一杯の励ましのつもりであった。そして、共に苦労する覚悟は出来ているという、これも精一杯の気持ちを込めたつもりだった。

 清之助が驚いたように目を見開いて、お由布をまじまじと見つめた。と、次の瞬間、その手を振りほどくと、呆れたように言った。

「まったく、お前は何も分かっちゃいないね」

 そして、大きく肩で息をついた。

「私の身に起きることは、お前にも関係のあることなんだよ。そこのところが、お前にはちっとも分かっちゃいない」

 清之助の言葉に、お由布の心が凍りついた。

 何も分かっていないのは、清之助の方ではないか。お由布は、ただじっと振りほどかれた手を見つめ続けていた。

    お由布の目には、あるいはその指の間から、はらはらと零れゆく砂が見えていたのかも知れない。

 

 翌朝早く、せわしげに清之助は店へと出かけていった。お由布の方を振り返りもしない。

 これまでの月日は、一体なんだったのか。いつでもどんなときでも口答えせず、少しでも不機嫌な色が見えたと感じると、即座に「申し訳ありまでんでした」と頭を下げる。その繰り返しの日々。しかし、繰り返しの中できっと何かが培われている、何かが積み重ねられていると信じていた。だからこそ……。

 だが結局、二人の間には何も育ってはいなかった。何一つ重ねては来られなかった。それを思い知った。あるのはただ、空疎な日々の積み重ねと、心の中に澱のように溜まった疲れだけだった。