37.おみくじを引いてみたなら

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 財団の面接を受けたのは年末でした。

年が明けてから、わたしは京都へ気晴らしの旅行に行きました。

京都に着いたその足で、まず向かったのは八坂神社です。

すでに1月中旬になってはいましたが、まだ1月なので初詣をさせていただこうと考えたからです。

子どもの頃からおみくじを引くのが大好きでした。

神社に行くと必ずと言っていいほどおみくじを引きます。

 

そういえば、昔、友人たちと京都へ来た際に、わたしの引くおみくじ、引くおみくじ、すべてが『凶』で、落ち込むより先にみんなのほうが、「こんなの氣にすることないよ」「そうよ、そうよ、たかがおみくじだよ」と、口々に慰めてくれたことがありましたっけ。

 

 

初詣でもあるし、これまで色々あったし

 

というわけで、その時もお参りを済ませたあとで、おみくじを引きました。

それが、なんと『1番大吉』

82090dd0f5c3a28aa5d7ea5e56b92243_s(これは、その当時のものではありません)

これまで数えきれないくらいおみくじを引いてきたわたしですが、1番はさすがに初めてでした。

 

やっぱり1番は、物事の始まりで大吉なんだ~

 

妙に感心しながらホテルへと向かって歩いていたら、ポケットの中の携帯電話が鳴りました。

出ると、派遣元の上司からでした。

 

 おめでとう! 採用が決まったよ!!

 

驚きました。

だって、おみくじで1番を引いたと思ったら、採用決定の電話です。

 

こんなことって、あるんだな

 

そのあと、しみじみとした気分になりました。

喜びというより、新しい仕事、新しい住まい、そして新しい人生が始まるのだ。

そんな思いで胸はいっぱいでした。

 

ようやく、トンネルを抜けた。

 

そう思いました。

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36.意識を変えて開運へ

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40過ぎの何の資格も特技もない女を、世間は必要としていない。

派遣社員として働き出してからも、ずっと心の隅にあった思い。

湯治場のような職場で、自分への自信を回復していっても、この思いはなかなか拭うことができませんでした。

出口のない迷路に迷い込んだような、悶々とした日々を過ごしていた、ある日。

こんな考えが、ふいに浮かんできました。

 

この世の中には、若ければいいという仕事ばかりだろうか?

ある程度の年齢の社会経験のある人間の方がいい仕事だってあるはずだ。

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その時、思い出したのは離婚届を出しに行ったときの光景でした。

離婚届を役所に取りに行ったのは前夫、提出はわたしでということでした。

精神的にいっぱいいっぱいの中で提出に行ったので、日付も時間帯もよくは覚えていません。

  28.結婚生活にケリをつける

 

ただ、その時窓口で対応してくださった方のことはよく覚えています。

年配の女性で、いたわるようなまなざしと口調が印象的な方でした。

もし、あの時窓口にいたのが若い女性で、

 

あ、離婚届ですね~

 

と軽く言われていたら、わたしはその場に卒倒して倒れていたかもしれません。

わたしは、あの時窓口にいた女性の対応に、本当に心慰められたのでした。

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そうだ。

わたしにだって役に立てる場があるはずだ。

 

内側からチカラが湧いてくるようでした。

 

その後、派遣社員として1年経ったとき、わたしは派遣元の上司に、離婚して実家に居候していることや、正社員になって自立を目指していることなどを正直に話しました。

そして、こう頼んだのです。

 

きちんと身分を保証された正社員としてなら、日本全国どこでも行きます。

 

と。

幸か不幸か、子どもはおらず、可愛がっていた犬にも死なれていて、わたしはどこにでも一人で自由に行ける身でした。

 

わかりました。

就職先を探してみましょう。

 

上司はそう言って帰っていきました。

   34.漆黒の闇と魔法の呪文

 

それから2~3週間経ったころでしょうか。

上司から連絡がありました。

 

就職先が見つかりそうですよ。

 

それは、かつて勤めていた損保が持っている財団でした。

前職が辞めたあと新卒を雇ったのですが、

 

とても務まりません

 

といって、すぐに辞めてしまったとのこと。

財団というのは、理事や評議員などにどれだけ、いわゆる名士を集められるかが重要です。

それが財団のステータスに繋がるからです。

その財団の役員も、一流企業の会長・社長から大学の名誉教授まで、そうそうたる顔ぶれでした。

新卒の女性は、その顔触れに恐れをなして辞めたのでした。

そこで、彼の財団では、『損保のOBで、なおかつ40歳前後の社会経験の豊富な女性』を探していたのでした。

ただし、職場は東京の新宿。

長野生まれ名古屋育ちのわたしにとって、東京で唯一土地勘があったのは新宿でした。

なぜなら前の仕事の出張で、年に数回東京に行っていて、その際の宿泊先は新宿が多かったのです。

 

行きます!

 

即答です。

まるで、わたしのために誂えられたかのような職場でした。

急遽、年末に面接のために上京。

そして、年が明けてから京都に一人で、一泊旅行に行きました。

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名古屋に住んでいると、京都はすぐ目と鼻の先。

若いころから、友人と、あるいは一人でと、京都には何度も行っていました。

派遣社員としての生活も落ち着いてきたし、久しぶりに一人でのんびり行ってこようと、そもそも予定を入れていたのです。

面接の結果が氣になりながらも、京都へと向かいました。

 

 

その京都で、また不思議な体験をするのでした。

 

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連載プロフィール目次 ☆☆☆

35.靈山で遭難!?

派遣社員として働くことを決め1年経ったところで、

上司に正社員になりたい旨を伝えたというところまで、

お話は進んだのですが、少し時間を巻き戻します。

 

注)今回のお話は、ちょっと長いです。

  でも、一氣にお伝えしたいので。

 

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母が好んで通っていた入浴施設がありました。

天然木でできた建物の中には、波動風呂なるもののほかに

足圧マッサージをしてくれる人やオーラ写真の撮影をしてくれる人などがいました。

おまけにランチはマクロビ系。

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今から10年以上も前の名古屋の片隅とは思えないコアな空間でした。

母を連れて行きながら、わたしもマッサージを受けたりしていました。

生まれて初めてオーラ写真を撮ったのも、ここです。

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ある日、足圧マッサージの先生から、こんな話を聞きました。

 

岐阜にある靈山のお水がとてもいい。

だけど、行きたくてもいけない人がたくさんいるのよ。

行こうとすると体調を崩したり、外せない用事が入ったりしてね。

お山に呼ばれていないと行けないの。

 

行きたいと思いました。

行こうと決めました。

 

派遣社員として働き出して数カ月。

休みを取っていくことにしました。

けれど、家族には靈山に行くとは言いませんでした。

びっくりするかもしれないし、そんなに悩みが深いのかと心配するかもしれないと思ったからです。

 

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さて、休みを取った当日、家族には友だち会いに行くと言って家を出ました。

目指すは、岐阜の靈山。

カーナビなど、まだそんなに普及していない時代。

もちろん、わたしの軽自動車についているわけがありません。

助手席に地図を置いて、いざ出発!!

 

言い忘れていましたが、わたしはハンパない方向音痴です。

それも、たいていは反対の方向へ行ってしまうので、同じところへ行くのでも人の倍は時間がかかります。

 

ところが、

 

ここへ行くぞ。

行きたい。

 

と真剣に思ったところには、

道路標識や看板などがバンバン目に入ってきて迷ったことがありません。

 

あ、でも、用事の済んだ帰り道は思い切り迷いますけどね。

 

 

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その日も、スムーズに進んで行きました。

 

難関は、カーブの多い山道です。

 

車を運転したことのある人ならお分かりかと思いますが、

カーブ続きの山道は運転がとても難しいのです。

 

ところが、そのカーブの多い山道へ差し掛かると、

わたしの車の前に、どこからともなく大型トラックが入ってきました。

 

わたしは、とにかくそのトラックの後ろに必死で付いていきました。

 

そして、難関を通り過ぎて安心した途端、トラックはどこへともなく走り去っていったのでした。

 

そうして、無事、靈山のふもとの駐車場に着くことができました。

 

 

 

 

本当は、途中のコンビニで飲み物や食べ物を調達する予定でした。

しかし、余裕がなくて何も買わずに来ていました。

 

 

さっと上って下りてくればいい。

 

 

簡単に考えていました。

 

靈山といっても2時間もあれば登れる低い山と聞いていたからです。

 

氣のはやっていたわたしは、登山者向けの案内パンフレットを車に置いたまま、

そそくさと山へ向かってしまいました。

 

 

 

はて?

登山口はどこだろう?

???

 

 

さて、わたしはどうしたでしょう?

 

 

 

山なんだから、上に向かって上っていけば、頂上に着けるはず。

 

 

と考えたのでした。

 

 

*良い子は真似をしないでね

 

 

適当なところから、山に入っていったわたし。

道なき道を、草を掻き分け石ころによろめきながら、上っていきました。

 

想像以上に大変でした。

 

息は上がるし、足は痛い。

 

ヘロヘロになったわたしの眼前に、牛の放牧場が・・・

 

 

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その向こうに見えるのは、登山道ではありませんか。

 

楽しそうに上っていく人たちの姿。

 

 

あ~、あそこへ行かねば・・・

 

 

勇気を出して放牧場を横切ることにしました。

 

そのとき、わたしは赤い服は着ていませんでした。

 

けれど、もし牛がびっくりして突進してきたらどうしよう。。。

 

そこで、

 

 

失礼します。

ちょっと、通らせていただきます。

 

 

きちんと声に出して言いながら、ペコペコ頭を下げつつ牛たちの間を通り抜けていきました。

 

*良い子は、絶対に真似をしないでね

 

 

ようやく登山道に出ることができた~!

 

しかし、道なき道を無理して上ってきた、わたしの足はすでに限界でした。

 

特に、途中で捻ってしまった左足は、もうほとんど動きません。

 

痛くて痛くて泣きそうでした。

 

 

見ると、上の方から一人のおじいさんが下りてきます。

 

 

頂上までは、あとどのくらいですか?

 

 

わたしが聞くと、

 

 

あと、ちょっとだよ。

 

 

そのおじいさんは笑顔で教えてくれました。

 

 

あと、ちょっとかぁ💛

 

 

元気が出てきました。

 

わたしは気分よく歩き出しました。

けれど、すぐにまた足が痛み出しました。

すると、今度は老夫婦が下りてきて言いました。

 

 

ここからは、ルンルンの道だよ。

(本当に、そう言ったんです)

 

 

そうか、ルンルンの道なんだ 💛

 

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勇気が湧いてきました。

 

わたしは、再び歩き出しました。

 

でも、またすぐに足が痛みだしました。

 

 

もう、ダメだ。

ほんとに、今度こそもうダメだ。

 

 

 

グッタリ していると、また別のおじいさんが下りてきて言いました。

 

 

頂上は、もうすぐだよ。

 

 

 

え、そうなの。

せっかくここまで上ってきたのだから、頑張ろう 💛

 

 

 

そうして、わたしは頂上にたどり着くことができたのでした。

 

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話に聞いた湧き水も飲めました。

(間抜けなわたしは、空のペットボトルを持っていくのを忘れていました)

 

 

さあ、あとは下るだけです。

 

来た道を戻ろうとしたその時、わたしの目に飛び込んできたのは、『林道⇒』の立て札。

 

実は、マッサージの先生から「林道がいいのよ」と聞いていたのです。

 

 

これだ!!

 

 

迷わず、林道へ向かいました。

 

木枠で作られた階段を下りていくと、途中で掃除をしている青年に会いました。

 

訝し氣な目で、わたしの方をじっと見てきます。

 

 

いえいえ、わたし、この道知ってますから。

大丈夫ですから。

 

 

といった風情を醸し出しながら、横を通りすぎて行きました。

(本当は、初めて通るのに。足だって痛いのに)

 

 

しばらく行くと、階段はなくなりました。

 

代わりに現れたのは、大きな石ころがゴロゴロ転がっている舗装されていない道でした。

 

だんだん心細くなりながらも、わたしはひたすらにその道を下っていきました。

 

 

!?

 

 

わたしの頭の中に、一つの疑問が湧いてきました。

 

この道は、どこに続いているのだろう?

 

 

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この林道を下っていった先が、どこなのか。

 

わたしが車を置いてきた駐車場に、果たしてたどり着けるのか?

 

???

 

 

ぞっとしました。

 

苦労して下りたところが、山の向こう側だったら、どうやって駐車場まで戻ればいいのでしょう。

 

 

痛みと不安で、歩みが遅くなります。

 

喉も乾いていました。

 

お腹もペコペコでした。

 

唯一持っていた梅仁丹も食べ尽くしていました。

 

 

 

このまま、ここで行き倒れになるのか。

 

 

 

真剣に、そう思いました。

 

 

すると、そこへスーッと一台の4WD車がやってきて、わたしの横に止まりました。

 

見ると、先ほどの青年です。

 

 

もしかして、道に迷われたのではありませんか?

 

 

 

わたしは、驚きました。

 

まさか、岐阜の山奥で、こんな美しい日本語を聞くとは!

 

今でも一言一句、はっきり覚えています。

 

 

 

もしかして、道に迷われたのではありませんか?

 

 

 

彼は、確かにそう言いました。

 

しばし、その美しい日本語にボーっとなった次の瞬間、

わたしは車のドアにしがみついていました。

 

 

この車は、どこへ行きますか?

 

 

 

必死の形相で、そう尋ねたのでした。

 

 

どこからいらしたのですか?

 

 

 

ふもとの駐車場です。

 

 

 

では、そこまで乗せていきましょう。

 

 

 

というわけで、車の助手席に乗せていただくことになりました。

 

感謝、感謝。

 

心の中は、感謝の気持ちでいっぱいでした。

 

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汚くてすみません。

 

青年は、そう言いながら助手席の荷物を後部座席に移し、

 

 

汗臭くてスミマセン

 

 

と言いながら、わたしは助手席に。

 

 

ほっとしました。

これでやっと戻れる。

無事下り着いたら、まずは何かを食べよう。

 

 

 

わたしの頭の中は、食べ物のことでいっぱいでした。

 

なのに・・・

 

車が急に止まりました。

 

 

何をしてるの?

わたしは疲れているし、お腹もペコペコなのよ。

早く車を走らせてよ。

 

 

 

先ほどの感謝の気持ちは、どこへやら。

ああ、何という恥知らずでしょう。

 

 

 

ほら、あそこに鹿が・・・

 

 

青年の言葉につられて目をやると、

森の中から一頭の鹿が、こちらをじっと見つめているではありませんか。

 

 

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しばらくは、一頭と二人が、じっと互いに見つめ合っておりました。

 

まるで時間が止まったようでした。

 

 

どのくらいそうしていたでしょう。

 

鹿は森の中へと消えて行き、青年は再び車を走らせました。

 

 

珍しい

普通、野生の鹿は人間を見ると、すぐに逃げるんですけどね

 

 

 

青年は言いました。

 

 

けれど、わたしの頭の中は、相変わらず食べ物のことでいっぱいでした。

 

 

 

無事、駐車場まで送り届けていただき、お礼の挨拶もそこそこに、

わたしは隣接している食堂に駆け込み、ようやく空腹を満たすことができました。

 

 

痛めた左足は、自分の両手で持ち上げて乗せなければならないほど、ひどい状態でした。

 

車がオートマチック車だったから良かったものの、マニュアル車だったらとても運転できなかったでしょう。

 

 

 

そして、帰り道は迷いまくり。。。

 

 

不思議なのは、家に帰ってお風呂に入ったら、足の痛みがすっかり取れてしまったことでした。

 

あ、不思議なことは他にもたくさんありましたっけ。

 

最後に、もう一度。

*良い子は、絶対、絶対真似をしないでね

 

 

後日談:

車を降りるとき、青年の名前も聞かずにいたのでした。ただ、彼が森林管理事務所から頼まれて林道の掃除をしていると車の中で聞いたのを頼りに、それらしい管理事務所に、こんな青年にお世話になりましたと、お礼の葉書を出したのですが、なしのつぶてでした

 

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