連載小説『お由布』 その七

  七

 

 八百屋からの帰りしな、不意にどきりとして、お由布は思わず立ち止まった。

 このところ胸の辺りにきりきりとした痛みを感じて、清之助が店に出かけた後に、横になるということが時折あった。どうかするとそのまま暮六ツの鐘が鳴るまで、起き上がることができないこともある。

 

 二人が祝言を挙げてから三年が過ぎていた。その歳月は、しかし二人に子供を授けることはしなかった。この三年という月日が二人の上にどのように流れていったのか。この頃お由布は考える。

 

 幸せとは、一体何なのだろう。

 

 平和であることが幸せならば、確かに今の自分は幸せである。守られていることが幸せというのなら、確かに幸せのはずである。なのに一向に心が温かく満たされないのは、なぜなのか。

 頼りがいがあると思っていた夫の厚い胸板が、今は目の前に立ち塞がる大きな壁に見える。大人らしい悟り切った態度すら、自分を一人前として見ていないように感じられた。

 寂しい。

 子供がいないからではない。もっと別の意味の寂しさが、お由布の心を締め付ける。

 毎日、自分の思いに背を向けて、言われるままに頷き謝ることで、表向きは平和な日々が続いていた。けれど、心の中には生み出されることのなかったいくつもの言葉が、澱のように幾重にも重なっていた。

 

 卯月に入って、雨が降ったかと思うと薄ら寒い曇天や、降りそうで降らない陰気な空模様が続いていた。体の不調は相変わらずで、最近では胸だけでなく頭までもが、きしきしと痛むようになっていた。胸につかえるような不快さに耐え切れず、清之助が店に出かけた後で、横になる。そんな日が、だんだんに増していっていた。

 

 

柳森神社

先日、古地図を片手に江戸散歩してきました。

 

神田から秋葉原へ行く途中、神田川沿いにあるのが柳森神社です。

 

 

 

ここにある福寿神は、おたぬきさまで有名です。

 

 

『たぬき』は、他を抜くに通じるということで、立身出世に後利益があるそうです。

 

 

この日も、主には男性が入れ替わり立ち代わりお参りにいらしていました。

 

 

お参りしていたら、なぜだかドキドキしてしまいました。

 

もしかして、なにか面白いことでも起きるのでしょうか。

 

ちょうど紫陽花が満開で、きれいでした。

 

 

 

自分で確かめる

その昔、とある作品を仕上げるために、どうしても実際に訪れてみたい場所がありました。

 

 

どうしても確認したいことがあったのですが、夫(前夫です)に言い出すことができず……

 

でも、

 

やっぱり、行きたい!

 

やっぱり、確認したい!!

 

 

と思ったわたしは、

 

 

行きました。

 

 

朝、夫をいつもと変りなく送り出すと、ダッシュで準備をし、

近鉄・新幹線と乗り継ぎ、やってきたのは、東京。

(その頃は、三重県に住んでいたのです)

 

 

行きたかった場所は、

 

東京タワー

 

です。

 

 

どうしても確認したかったのことは、二つ。

 

一つは、

 

展望台からの眺め

 

そして、もう一つは、

 

その時、自分が何を感じるか

 

です。

 

 

東京タワーの展望台に上り、そこからの眺めをしっかりと目に焼き付け、

そして心に問いかけ、再びダッシュで家へと戻り、

何食わぬ顔をして帰宅した夫を迎えたのでした。

 

 

さて、今日は、現在連載中の小説『お由布』の舞台となる場所を、実際に歩いてきました。

 

これで、三回目です。

 

 

本日のお供は、こちら。

 

古地図の類は何種類か持っているのですが、今日はこれを持って出ました。

 

中は、現在と江戸時代とを対比してみることができるようになっています。

 

 

バスも電車もなかった江戸時代の庶民は、もっぱら歩き。

なので、実際に歩いてみないと。

もちろん、小説に描くことすべてを実際に確認することは無理です。

でも、できる限り自分の目と足で確認したいと思います。

 

本日のスタート地点は、こちら。

 

テレビのCMでもお馴染みの福徳神社です。

小説に出てくる清之助の勤め先は、この辺りという設定です。

 

爽やかな小道も…

 

 

さらに歩いていくと、こんな楽しいお店もありました。

 

 

 

クチナシの甘やかな香りにも癒されて、気分上々の江戸散歩でした。