41.美しい日本語は人生を好転させる

財団に就職して最初にペアを組んだ派遣のスタッフさんは、偶然にも住んでいる場所も一駅しか違わず、よく一緒に帰りました。

 

 

電車に並んで座って、いつも楽しく色々な話をしながら帰ったものです。

 

 

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ある日の帰りの出来事です。

 

 

いつものように二人で並んで座り話をしていました。

と、次の瞬間、わたしは立っていました。

 

目の前のわたしが座っていたはずの席には、こう言ってはなんですが、

とんでもなく汚らしいおじいさんが座っています。

 

 

そして、

 

 

もし、よろしければ、こちらにお掛けになりませんか?

 

 

と、あの岐阜の山奥で聞いた以来の美しい日本語が、

なんとわたしの口から発せられて席を譲ったという記憶だけが、わたしの頭の中にあったのです。

  35.霊山で遭難?

 

 

 

通常なら、

 

 

わたしが座っている前に、お年寄りがやってきます。

 

わたしはそのお年寄りを見て、「席を譲ろう」と思い、「どうぞ」とか、せいぜい「こちらに、どうぞ」とか言って席を立つ。

 

お年寄りが「どうも、ありがとう」とか言いながら、その席に座る。

 

 

こんなふうに進んで行くのではないでしょうか。

 

 

でも、その時は、まるでタイムスリップでもしたかのように、そのリアルなやり取りが、すっぽり抜け落ちているのです。

 

 

スタッフさんといつものように話をしていたはずが、氣がつくと既にわたしは立っていました。

 

そして、

 

 

もし、よろしければ、こちらにお掛けになりませんか

 

 

と、日本語好きのわたしとて、滅多に使ったことのない美しい日本語と共に席を譲ったという記憶だけが頭の中に・・・

 

 

狐につままれたような気持で、その日は帰りました。

 

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翌日、職場に行くと、スタッフさんが言いました。

 

 

昨日、恰好良かったですね。

 

 

え?

 

 

 

わたしは聞き返しました。

 

 

 

だって、あんな汚いおじいさんに席を譲るなんて

 

 

 

そこで、わたしは昨日の不思議な感覚を彼女に話しました。

すると、彼女は、こう言いました。

 

 

 

もしかしたら、あのおじいさんは神様が姿を変えて現れたのかも

きっと、これからいいことがありますよ

 

 

確かに、岐阜の霊山で、美しい日本語を聞いたあと、

わたしは再就職先が決まり上京。自活できるようになりました。

 

とすれば、今回もまた、なにかいいことが起きるのかも・・・

 

 

淡い期待を持ちながらも、日々の忙しさに紛れて、いつしかそんな出来事のあったことすら忘れていきました。

 

 

まさか、その数カ月後に、今の夫と劇的な出会いをして電撃結婚をすることになろうとは・・・

 

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40.夢に勇気をもらう

上京する準備は、すべて整いました。

あとは、引っ越しするのみです。

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東京での一人暮らしは、ちゃんとできるだろうか?

仕事は覚えられるだろうか?

職場のみなさんと仲良くできるだろうか?

 

心配し始めるときりがありません。

そんな、ある晩のこと。

こんな夢を見ました。

 

目の前に長い長い階段があります。

 

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階段の先は、遥か彼方、雲の中です。

上った先にどんな世界が広がっているのか、

下から見上げるだけではわかりません。

 

ただ、空に広がる雲が虹色に輝いているので、

美しい世界があるのだろうことは想像に難くありません。

 

それにしてもの、長い階段です。

 

 

 

こんな長い階段、わたしに上りきることができるのだろうか?

 

 

 

夢の中で、わたしは逡巡しています。

上って行けば幸せになれそうです。

でも、あまりにも長過ぎて、途中で挫折してしまいそうです。

 

しばらくは空の彼方に続く階段を見上げていたのですが、心を決めました。

 

 

 

よし、上ろう。

 

 

 

わたしは、勇気を出して最初の一段に足をかけました。

次の一段

その次の一段・・・

 

 

 

 

すると、どうでしょう。

階段がエスカレーターに変わり、

音もなくスーッと上に上がっていくではありませんか。

 

 

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そこで、目が覚めました。

東京での生活は、きっとうまくいく。

そう確信しました。

 

 

 

わたしは思うのです。

生きていれば辛いことや苦しいこともあるでしょう。

いつ、そこから抜け出せるのかと途方に暮れることもあるでしょう。

それは天(あるいは神様)があなたを試しているのです。

 

 

 

お前に、この階段を上る勇気はあるか?

 

 

 

と。

 

 

 

でも、勘違いしないで欲しいのです。

天が試しているのは、階段を最後まで上るかどうかではないのです。

最初の一段に足をかける勇気、それだけなのです。

 

目の前に困難があると、最初の一歩すら怖くて、

なかなか踏み出せませんよね。

 

でも、その一歩を踏み出したとき、

あなたの目の前の階段は、きっとエスカレーターに変わります。

 

そして、あなたをあなたの行きたい場所へと、きっと運んでくれます。

 

わたしは、そう信じています。

 

 

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心の歌

先日、紅子さんのブログを読んで思い出したことがありました。

 紅子さんのブログは、こちら

 

引っ張り出してきたのは、わたしが四日市文芸賞を受賞したときの、「受賞の言葉に代えて」という文章。

 

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3部構成で書いた中のひとつが、≪ 心の歌 ≫です。

 

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   ≪ 心の歌 ≫

 

私は歌を歌うことが苦手である。

もっと正しく言えば音痴である。

私は歌が歌えない。

 

だから私は文章を書く。

音符の代わりに言葉を置いて、リズムを刻んでメロディーを奏でる。

大好きな「言葉」を使って、自分の呼吸で文を連ねる。

 

私の書く文章は、私の歌う歌である。

 

DSC_0004                                                                                                 (1996.2.15)

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ちなみに、丘由実というのは、昔のペンネームです。